日本学士院

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日本学士院客員の選定について

日本学士院は、令和7年3月12日開催の第1187回総会において、クリストファー・ジョン・ウィッカム (Christopher John WICKHAM)氏を日本学士院客員に選定しましたので、お知らせいたします。

 日本学士院客員について

氏名

クリストファー・ジョン・ウィッカム
(Christopher John WICKHAM)

現職

英国学士院会員
オクスフォード大学オール・ソールズ学寮チチェーレ講座引退教授

国・地域名

イギリス

専攻学科目

中世初期ヨーロッパ史

生年(年齢)

1950年(74歳)

主要な学術上の業績

クリストファー・ジョン・ウィッカム博士は、古代末期から中世初期にかけてのイタリア北部社会の構造的発展を、堅固な史料基盤に支えられながら展開したが、さらにその視野を全ヨーロッパに広げ、自らが開拓した歴史認識論をもとにして、それまでの初期ヨーロッパ史研究の根本的な見直しを行い、2005年にパラダイム転換の書とも言うべき大著『中世初期の枠組みを作ること』を発表し、この分野の歴史認識を格段に深化させた。この新たな認識論は、一般読者に向けて書かれた著書『ローマの遺産』(2009年)によって、初期ヨーロッパ史理解のスタンダードとしての地位を獲得した。さらに2023年に公刊した『驢馬とボート:地中海経済を再解釈すること、950-1180』では、地中海商業交易の実相を中近東諸語で書かれた文書を含む多様な文字史料を駆使し、中世地中海経済発展が、海上取引ではなく陸路交易が作り出すネットワークこそが先達の役割を果たした事実を明らかにした。このように博士が現在の西洋中世初期史研究の世界的リーダー役の一人であることは、研究者が一致して認めるところである。