日本学士院

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日本学士院客員の選定について

日本学士院は、令和4年3月14日開催の第1157回総会において、次の3名を日本学士院客員に選定しましたので、お知らせいたします。

氏名

ハルオ・シラネ(Haruo Shirane)

ハルオ・シラネ

現職

コロンビア大学ドナルド・キーン日本文化センター長、同東アジア言語・文化学部教授、同学部長顧問

国・地域名

米国

専攻学科目

日本文学

生年

1951年(70歳)

主要な学術上の業績

 ハルオ・シラネ氏は日本で誕生後まもなく御両親に伴って渡米、アメリカ合衆国に帰化、ニューヨークのコロンビア大学で学ばれました。日本文学・比較文学の分野において著しい業績をあげ、日本文学・文化研究で高い声望と強い世界的な影響力を有する碩学です。その学問的業績としては、西欧の文学理論を導入して『源氏物語』の文学的な特質を鮮やかに分析し、その卓越性を全世界に認識させたことや、古代から現代に至る日本の文学や多くの芸能・芸道その他の文化活動が日本の地理的条件に由来する日本人の自然観と密接な関係にあることを具体的に解き明かした著書論文などが挙げられます。それと共に、コロンビア大学の東洋学の責任者として、広くアジアの研究者と交流し、共同研究の機会を提供されたこと、とくに日本の若い研究者のアメリカにおける研究を指導、援助されたことは、日本の学術研究に対する大きな貢献となっています。

氏名

エドワード・キャロル・ストーン(Edward Carroll Stone)

スヴァンテ・リンドクヴィスト博士

現職

カリフォルニア工科大学教授、カリフォルニア工科大学特別計画副学長、30m望遠鏡国際天文台執行代表、ボイジャー計画科学者

国・地域名

米国

専攻学科目

宇宙物理学

生年

1936年(86歳)

主要な学術上の業績

 エドワード・キャロル・ストーン氏は1977年に打ち上げられた惑星探査機ボイジャー1号・2号の計画科学者を務めました。木星、土星、天王星、海王星とそれらの衛星を探査する11の科学チームを主導し、その科学的意義を人々に分かりやすく伝えました。ボイジャーがもたらした鮮明な画像は人類の太陽系観を一変させました。1990年代はジェット推進研究所所長として、木星探査機ガリレオ、土星探査機カッシーニ、火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー及びマーズ・パスファインダーを成功させました。同氏は日本の宇宙科学の発展にも多大な貢献をし、国際宇宙航行アカデミー会長を務めました。地上天文学に対しても、ハワイのW・M・ケック天文台の建設と運営を統括し、2014年からは日本も創設メンバーとなっている国際プロジェクト次世代超大型望遠鏡計画TMTの代表者を務めています。

氏名

ピーター・グルース(Peter Gruss)

ピーター・グルース

現職

沖縄科学技術大学院大学学園理事長・沖縄科学技術大学院大学学長、ゲッティンゲン大学名誉教授

国・地域名

ドイツ

専攻学科目

発生生物学

生年

1949年(72歳)

主要な学術上の業績

 ピーター・グルース氏は、哺乳類の器官形成のために必要な遺伝子を探索・研究し、「Pax」などの転写遺伝子群を同定して、これらが、眼、内耳、脳、甲状腺、膵臓、腎臓、骨格筋などの形成に必要であることを明らかにしました。とくに、Pax6に関する研究は、特定器官の形成のために働く転写因子が動物種を超えて保存されているという進化生物学上の重要概念の成立に寄与し、さらに、ヒトの疾患の原因にも光を当てることとなりました。また、ドイツのマックス・プランク学術振興協会会長を務め、ドイツ国内のみならず国際的な視点から科学の振興を図りました。近年は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の学長として、日本の研究・教育の推進、そして、その国際化のために大きな指導力を発揮し、沖縄地域における科学技術イノベーション創出のためにも多大な貢献をしています。