日本学士院

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日本学士院客員の選定について

日本学士院は、令和2年10月16日、次の3名を日本学士院客員に選定しましたので、お知らせいたします。

氏名

ビクター・J・ザウ(Victor J. DZAU)

ビクター・J・ザウ博士

現職

米国医学アカデミー会長、
デューク大学医学部James B. Duke教授

国・地域名

米国

専攻学科目

内科学(とくに心臓病学)

生年

1945年(74歳)

主要な学術上の業績

 ザウ氏は、世界でも有名な内科学者、とくに心血管系疾患の研究者であり、指導者です。分子生物学的な手法を用いて、血管系にレニン・アンギオテンシン系が存在し、動脈硬化性の病変の進行に関与すること、その抑制は治療効果があることを見出すとともに、ラパマイシン溶出性ステントの基礎となる研究を行い、さらには心筋の再生の研究などでも成果を挙げました。スタンフォード大学教授、ハーバード大学教授、デューク大学教授、同大学健康科学部学長などを歴任し、多数の後進を育成しました。現在、米国医学アカデミー(National Academy of Medicine)の会長を務め、健康な長寿を達成するための国際的なプロジェクトを立ち上げ、最近ではCOVID-19への対策にも力を入れています。同氏は、日本への関心も強く、多数の日本人研究者を育成するとともに、WPIなど日本政府のプロジェクトの委員も務めています。

氏名

スヴァンテ・リンドクヴィスト(Svante LINDQVIST)

スヴァンテ・リンドクヴィスト博士

現職

アンデルス ワルス(Anders Walls)財団理事長、
東京大学国際高等研究所東京カレッジ潮田フェロー

国・地域名

スウェーデン

専攻学科目

科学史学・科学哲学

生年

1948年(72歳)

主要な学術上の業績

 スヴァンテ・リンドクヴィスト氏は、科学哲学に裏付けられた科学史学において業績を挙げました。同氏は、科学史学を基礎とする科学的知識の発見と拡散、および新技術の発明と技術移転の歴史に関する実証的な研究の成果により、人類が知識の拡大によって社会の近代化を遂げてゆく基本的視点を提供しています。またノーベル賞における受賞者の系譜と科学技術の社会的発展の歴史との関連に関する研究は独自のものであり、その成果をもとにノーベル博物館を創設し、初代館長として、科学技術についての一般の関心を高めることに大きな貢献をしました。ノーベル博物館の世界巡回展の第1回に日本を選定したことをはじめとして、日本の科学者との交流も深く、現在も東京大学より招聘を受け数々の講演を行うなど日本の学術発展に貢献を果たしています。

氏名

カール-ヘンリク・ヘルディン
(Carl-Henrik HELDIN)

カール-ヘンリク・ヘルディン博士

現職

ノーベル財団委員長
ウプサラ大学シニア教授

国・地域名

スウェーデン

専攻学科目

分子生物学・分子腫瘍学

生年

1952年(68歳)

主要な学術上の業績

 カール-ヘンリク・ヘルディン氏は、細胞の増殖と分化に関わるタンパク質である増殖因子について、血小板由来増殖因子(PDGF)やβ型トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)を中心に生化学・分子生物学的視点から研究を行い、増殖因子研究の基盤を早期から築き上げ、増殖因子とがんとの関連を中心に画期的な研究成果を挙げました。とくに増殖因子の細胞内信号伝達に関わる重要な分子の働きを明らかにすることにより、がんの分子機構の理解と診断や治療への応用に大きく寄与しました。同氏はまた多くの日本人研究者を長年にわたって自らの研究室に受け入れ、さらに学会活動などを通じて日欧の共同研究を推進するなど、日本の学術に大きく貢献しています。