会員情報
氏名
小田部胤久(おたべ たねひさ)
所属部・分科
第1部第1分科
選定年月日
令和4年12月12日
専攻学科目
美学芸術学
現職等
東京大学大学院人文社会系研究科教授
受賞等
〔国内〕
〔海外〕
ドイツ・フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞(2007年)
外国アカデミー会員等
主要な学術上の業績
小田部胤久氏は18世紀中葉から19世紀初頭にかけてドイツで成立した西洋近代美学の研究を中心に据えて、古代ギリシアから現代にいたる西洋美学史全般、さらには近代日本の美学理論の研究に取り組み、大きな成果を挙げてきました。その研究の特質は、原典の厳密な読解から出発して、それぞれの美学理論を構成する概念の意味を確定するにとどまらず、それらの概念を西洋思想の広大な歴史的展開の中に位置づけ、それらが美学の根本的主題である感性、芸術、美といかに関わるかを追究することを通じて、身体と精神、感性と知性を兼ね備えた人間がよく生きるための条件の探究としての美学の歩みを跡づけるところにあります。このような小田部氏の仕事は欧米の学界でも高く評価されていますが、一方、同氏は日本人として西洋の美学を研究することに自覚的であり、自らの研究の営みを反省することを通じて近代日本の美学に目を向け、それが単なる欧米の理論の受け売りではなく、それに新たな可能性を開くものであることを、多数の論考によって明らかにしてきました。同氏の仕事は、個別の文化の固有性に立脚して、普遍的な世界文化の建設に寄与することを目指す今日の人文学研究の一つの模範ということができます。
主要な著書・論文
I. 著書
- 『象徴の美学』(東京大学出版会,1995年1月,417頁)
- 『芸術の逆説――近代美学の成立』(東京大学出版会,2001年11月,312頁, 新装版2024年9月,307+vi頁)
- 『芸術の条件――近代美学の境界』(東京大学出版会,2006年1月,316頁, 新装版2024年9月,311+iii頁)
- 『西洋美学史』(東京大学出版会,2009年5月,267頁)
- 『木村素衞――「表現愛」の美学』(講談社,2010年9月,204頁)
- 『美学』(東京大学出版会、2020年9月、480頁)
II. 編著
- Onomasticon philosophicum latinoteutonicum et teutonicolatinum『羅独―独羅学術語彙辞典』(麻生建,黒崎政男,山内志朗氏との共編著,哲学書房,1989年,797頁)
- 『スタイルの詩学――倫理学と美学の交叉』(山田忠彰氏との共編著,ナカニシヤ出版,2000年、294頁)
- The Great Book of Aesthetics. The 15th International Congress of Aesthetics, Japan 2001. Edited and published by Ken-ichi Sasaki and Tanehisa Otabe, Tokyo 2003. CD-ROM
- Ästhetische Subjektivität. Romantik und Moderne. Hrsg. von Lothar Knatz und Tanehisa Otabe. Würzburg 2005, 290 S.
- 『交響するロマン主義』(長野順子氏との共編著,晃洋書房,2006年、198頁)
- 『デザインのオントロギー――倫理学と美学の交響』(山田忠彰氏との共編著,ナカニシヤ出版,2007年4月,287頁)
- Kulturelle Identität und Selbstbild. Aufklärung und Moderne in Japan und Deutschland. Hrsg. von Lothar Knatz, Norbert Caspar und Tanehisa Otabe. Berlin 2011. 230 S.
- The Journal of Aesthetics and Phenomenology, vol. 6, issue 2 (2019), The Unconscious (Taylor & Francis Online), pp. 95–202(責任編集)
III. 訳書
- シェリング『超越論的観念論の体系』(久保陽一氏との共編,文屋秋栄,2022年,446頁)
- カント『判断力批判 第1部 訳と詳解』(東京大学出版会,2024年,386+vi頁)