日本学士院

第9回学びのススメシリーズ講演会講演要旨

徳川吉宗に学ぶ—日本の宝を守った将軍   田代和生

「享保の改革」で有名な第8代将軍徳川吉宗が、海外へ流出していた大切な日本の宝を守ったことはあまり知られていません。「鎖国」時代の国際関係は長崎だけでなく、とくに対馬を経由した朝鮮との貿易では、薬用人参の輸入の見返りに良質な銀貨を長年にわたって支払ってきました。そこで吉宗は、国民に安くこれを提供しようという夢の実現に向かって、誰も挑んだことのない朝鮮人参の人工栽培に取り組みます。数十年をかけた国家的プロジェクトのもと、幾多の失敗にも負けず成功に導いた吉宗には、ある「秘策」がありました。今回は、日朝関係史の舞台裏でくり広げられた朝鮮人参国産化政策のなかから、将軍吉宗の国民へ対するひとつの志を学んでいきたいと思います。