第79回公開講演会講演要旨
1) 明治の静岡―開化・伝統・経済成長― 斎藤 修
21世紀の静岡は、人口一人あたり県民所得の全国順位が5位以内に入る豊かな県ですが、明治時代までさかのぼってみますと、その値が全国平均を少し下回る、中間グループを構成する県でした。この統計的事実は、静岡県経済の長期的な成長率が全国平均のそれよりも高かったことを意味します。講演においては、この県経済成長の過程、すなわち成長のスピードがどう変化したかと、それに伴って産業構造がどのように変容したかの過程をたどり、明治・大正の時代にその淵源を探ります。それにより、幕末開港と明治維新がもたらした「開化」のインパクトと、それへの対応にあたって「伝統」がいかなる役割を果たしたのかとを比較考量したいと思います。
2) 強くて賢い半導体が創る未来社会 天野 浩
次世代の半導体産業を担うと期待されている窒化ガリウム(GaN)について紹介します。現在照明のほとんどはこのGaNによるLEDが用いられています。その応用は照明に留まりません。パワー半導体として用いることによって、LEDを超える省エネや再生可能エネルギーの普及が促進されます。半導体と言えばシリコンですが、シリコンは演算や記憶が得意なことから、人間で言うと頭脳の役割を果たします。一方、パワー半導体というのは電力をシステムに供給する役割を果たすので、人間で言うと心臓の役割を果たす半導体です。GaNが強くて賢い理由は何か、なぜパワー半導体として期待されるのか、どのような未来が皆さんを待っているのか、現在のGaN研究開発の状況を交えて紹介します。