日本学士院

第75回公開講演会講演要旨

1) コーポレート・ガバナンスの基本問題    江頭憲治郎

「コーポレート・ガバナンス」(企業統治)とは、上場会社の経営者に対する監督(規律づけ)の仕組みをいいます。日本では、社外取締役の選任、女性幹部の登用等の「ガバナンス改革」が進んだが、まだ具体的な成果に結びついていないといったことがいわれます。この講演は、頻繁な制度改正の解説ではなく、これが今なぜ日本でも外国でも大きな問題なのか、これが日本の上場会社の問題点とされてきた事柄とどう関係しているのか、といった視点からお話をしたいと思います。具体的には3つの論点を取り上げます。第1は、日本の上場株式の保有分布です。第2は、日本のコーポレート・ガバナンスにおける従業員の位置づけです。第3は、SDGs等に関係し特に外国で議論が活発化している「株主主権か、ステークホルダリズムか」という問題です。

 

2) 水と環境  丸山利輔

本講演では、地球の自然史の立場から現在の自然環境が海洋の存在とどのように関係しているかについてまず概説し、地球と太陽の相対的位置により水が液相・気相・固相の3相を取り、その相変換に伴う熱の出入りが水と環境に密接に関わる基本であることを述べます。次に、話題を具体的な水と環境の関係に転じ、水の過剰な場合の一例として、新潟平野における水との戦いに果たした先人の役割を振り返り、今日の新潟平野の環境が水とどのように関わっているかを考えます。一方、わが国のような湿潤地帯の対極にある砂漠の開発について、エジプトの例を紹介し、その功罪を考えます。最後に、開発途上国における水環境整備の重要性を述べまとめとします。