日本学士院

第64回公開講演会講演要旨

1) 「日本」という国号  東野治之

   日本はいつから「日本」なのか、「日本」とはどういう意味か、外国での呼び名ジャパンは何に基づくのか、こうした問いに正しく答えられる人は決して多くない。不思議なことに学校でも、まともに教わることはないと思う。私が専門とする歴史学は、過去を振り返って調べ、今を考える学問であるが、国号の問題は、まさに我々の歴史や文化を考える上に絶好の手掛かりになる。国号に対する関心が低いこと自体、歴史の結果なのである。そこでこの講演では、私のこれまでの研究に基づき、国号が定まったいきさつや、その伝わり方をたどり、日本の歴史や国際交流の特色を述べてみようと思う。

2) 人類の健康と福祉を支える微生物の働き   大村 智

   演者はこれまでに微生物代謝産物(天然有機化合物)に関わる研究を微生物の分離から始まり、探索系の構築、得られた化合物の構造決定、有機合成、生合成、作用機序および応用研究について研究を進めてきた。
  これまで発見した天然有機化合物の中からプロテアソーム阻害活性を有するラクタシスチン、プロテインキナーゼ阻害活性を有するスタウロスポリン、および寄生虫の神経伝達を阻害するエバーメクチンを例に挙げて優れた微生物の物質生産能が人類の健康と福祉に役立っている様子について述べる。