日本学士院

第55回公開講演会講演要旨

1) 文学と都市 —上野・浅草を例として—  久保田 淳

   都市は時代が進むにつれて多くの人々を集め、さまざまな機能を持ちながら、発展を続けてゆく。そしてそこに繰り広げられる幾多の人生は、すべて文学の対象となりうるものである。そのような文学と都市の関係を、江戸・東京という歴史的都市の中でもきわめて特色を有するスポットである上野・浅草とその周辺を例に、考えてみたい。
この地域を背景とする文学作品はおびただしい数にのぼるが、今回は中世のいくつかの紀行文にはじまり、近世・近代の著名な作家・劇作家・詩人などの作品を取り上げて、彼等はこれらの土地のどのような機能に着目し、どんな人物の人生を描き出そうとしたのかを、時代を追って辿ってみたい。

2) 医療と放射線   杉村 隆

    医療の各分野で放射線が使われている。胸部撮影、胃・大腸の二重造影、乳腺マンモグラフィ一等はX線を使う。早期にがんを見つけて治癒させる。短寿命の放射線同位元素を、がんに取り込ませ、そのガンマ線で診断するPET法もある。
がんの治療には放射線が効果を挙げる。がん組織のみに放射線が当たる素晴らしい機械が使われる。α、β、γ線を出す放射能同位元素も治療に使われる。がんのコバルト照射治療等の例がある。原子核の陽子/炭素を治療に使う陽子/重粒子線治療も、がんに卓効がある。
自然にも放射能のある原子は存在する。原子力発電事故で核分裂で生じた放射能物質による被曝は、出来るだけ避けたい。