日本学士院

第44回公開講演会講演要旨

共通テーマ 化学の社会的影響

1) 身近な日常の化学   向山光昭   

 化学の力によってつくられる物質は豊かな日常生活に大いに役立っている。例えば、従来依存してきた綿や羊毛に代表される天然繊維に加え、現在はナイロン、ポリエステルなどに代表される合成繊維による製品が多方面で使われている。また、医薬品をはじめ生活に密着している化学製品も日常欠かせないものとして、その必要性が増大している。
化学の力は新しい製品をつくるために必要な手段として多方面に利用されているが、これらの基礎になる研究はさらに次々と新しい可能性を生み出し、従来にない有用な興味ある物質を創成する原動力になっている。これからも化学の力によってさらに日常に役立つ製品が次々と開発され、豊かな生活に貢献するものと期待されている。

2) 発明の企業化が容易になる
—新会社法で会社の設立はどうなるか—   河本一郎

  発明された化学製品も、企業化されなければ、社会の役に立たない。企業化といえば、会社を設立することである。現に、大学発ベンチャーは、1,000社を超えている。会社には、従来、合名会社、合資会社、有限会社、株式会社があった。合名・合資会社は、無限責任を負わねばならないから、嫌われた。できれば、みな株式会社になりたがった。しかし、それには最低1,000万円の資本が必要であった。有限会社でも、300万円が必要であった。今年5月施行の会社法では、資本金1円で株式会社が設立できる。もっとも、これには、平成15年2月施行の「新事業創出促進法」によって、経済産業大臣の確認を受けた創業者は、資本金1円で株式会社を設立できるという地ならしができていた。新会社法は、これを一般化することによって、ベンチャー企業の設立を促進し、日本経済の活性化を立法の面から後押ししようとするものである。本講演では、資本金のみならず、その他の改正点についても、従来の立法の流れに即しつつ話す予定である。