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日本学士院学術奨励賞の受賞者決定について

日本学士院は、優れた研究成果をあげ、今後の活躍が特に期待される若手研究者6名に対して、第10回(平成25年度)日本学士院学術奨励賞を授与することを決定しましたので、お知らせいたします。

氏名 井出 哲 (いで さとし) 井出哲
生年月

昭和44年9月(44歳)

現職 東京大学大学院理学系研究科教授

専門分野

地震学

研究課題 微小地震から巨大地震まで適用可能な地震発生過程物理学の構築
選考理由

 井出 哲氏は地震の破壊過程の研究において1990年代より高く評価されてきました。2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の際、独自の解析法を用いて、発生当初の微小破壊が成長し巨大津波を発生させて最終的大破壊に至った過程をいち早く明らかにした業績(Science, 2011)は、その延長線上に為されました。また、2000年代に発見された低周波微動、スロースリップなどが普通の地震のスケーリング則とは別の単純なスケーリング則に従うことを示した画期的論文(Nature, 2006, 2007)も、内外で極めて高く評価されています。井出氏の研究の特徴は、個々の震動現象の解析を基本としつつも、その個別理解に留まらず、異なる現象の統一的理解を目指す点にあります。我が国のみならず、世界の地震学への今後の貢献が大いに期待されるところです。教育者としても、職責を十全に果たして行かれるであろうことには疑いの余地はありません。

氏名 印南 秀樹 (いんなん ひでき) 印南秀樹
生年月 昭和45年7月(43歳)
現職 総合研究大学院大学先導科学研究科准教授
専門分野 理論集団遺伝学、ゲノム進化学
研究課題

ゲノム情報を用いた進化メカニズムの一般法則の理論的解明

選考理由

 遺伝子系の進化は既存遺伝子の重複に始まります。日々大量に生み出されるゲノム情報は、今が進化に果たす遺伝子重複の役割を解明する適切な時期であることを示唆します。印南秀樹氏は、2000年代初頭から重複遺伝子の遺伝的多様化に関する分子進化学的研究に着手し、基礎的な集団遺伝モデルを構築しました。その後、ヒトのRh血液型を支配する2遺伝子からなる重複遺伝子族を研究し、「選択下における2座位遺伝子変換モデル」を構築、重複遺伝子座位における分子レベルの変異量を推定し、それが、遺伝子変換•選択説の立場から説明出来ることを明示しました。その後、多くの研究を重ね、2010年には、集団の重複遺伝子系の進化過程が、従来から知られている突然変異生起期、変異固定期、固定変異維持期の3期に、重複コピーの差異獲得期を加えた4期からなることを示し、各期別に、これまでに提唱された10種の遺伝子重複進化モデルから期待される遺伝子系進化の特徴を予測しました。この予測に基づき、各遺伝子系進化モデルの適否の包括的検討が可能となり、分子進化の研究に新局面を開きました。Genes誌の2011年の特集号「Gene Conversion in Duplicated Genes」の編者に印南氏が選ばれたことは、同氏のこの分野における現在の位置を表しています。

氏名 後藤 真孝 (ごとう まさたか) 後藤真孝
生年月 昭和45年5月(43歳)
現職

産業技術総合研究所情報技術研究部門首席研究員

専門分野 音楽情報処理
研究課題

計算機による音楽・音声の自動理解とそのインタフェース応用に関する先駆的研究

選考理由

 後藤真孝氏は、コンピューターによる「音楽の自動理解技術」という困難な課題に挑み、その成果によって世界的なインパクトを及ぼした音楽情報処理分野の第一人者です。コンピューターが、音楽を音響信号として膨大に蓄積し、再生することは容易でしたが、音楽として混ざり合った複数の音が持つ複雑な時間構造・周波数構造を自動理解することは困難でした。その自動理解のためには、人間が音楽を聴くときに無意識に行う処理を工学的に計算可能にする必要があります。後藤氏は、音楽に対する鋭い洞察と卓抜な数理的操作を通じて、複雑な実世界の音楽音響信号から(1)ビート(拍)の位置を推定し、(2)メロディを抽出し、さらには(3)曲がいちばん盛り上がる「サビ」の区間を同定するための画期的な技術を確立しました。同氏はこの技術にもとづく応用研究として、一般ユーザーの参加・貢献によって利便性が向上する能動的音楽鑑賞サービスをインターネット上で実現し、また学術利用可能な研究用音楽データベースを構築して、音楽情報処理分野全体が発展する基盤を築きました。加えて同氏は、音声言語情報処理の分野でも新たな発想で優れた成果を挙げました。

氏名 小林 研介 (こばやし けんすけ) 小林研介
生年月 昭和46年5月(42歳)
現職

大阪大学大学院理学研究科教授

専門分野 量子物性
研究課題 固体量子素子における多体効果と非平衡ゆらぎに関する実験的研究
選考理由

 昨今の微細加工技術の発展により、メゾスコピック系(固体量子素子)が実現され、電子伝導の制御が可能になりました。小林研介氏はこれらの微小な半導体固体量子素子を自在にデザインし、物質があわせ持つ波動性と粒子性の二重性が同時に顔を出すいくつかの新しい量子力学的効果を実証しました。
 その一つは、メゾスコピック素子である人工原子と電子の連続系とを組み合わせた微小な電子干渉計を用いて、ファノ効果に基づく新しい電子伝導機構を世界で初めて実証したものです。さらに、世界最高レベルの感度を持つ電流ゆらぎ測定系を開発し、非平衡量子多体系におけるゆらぎの定理を世界で初めて実証する成果を得ています。また、非平衡性を利用したスピン分極電流生成や、シリコンにおける巨大な磁気抵抗効果を見出しています。小林氏の研究は半導体の制御性を活かしながら、分光学や統計力学など幅広い分野を融合する形で成し遂げられた普遍性の高い独創的な研究です。

氏名 斎藤 通紀 (さいとう みちのり) 斎藤通紀
生年月 昭和45年6月(43歳)
現職 京都大学大学院医学研究科教授
専門分野 細胞生物学、発生生物学
研究課題 マウス生殖細胞の発生機構の解明とその試験管内再構成
選考理由

 精子及び卵子の起源となる始原生殖細胞は、その発生過程においてゲノムワイドなエピゲノム修飾を変換し、細胞としての全能性・多様性を獲得する基盤を形成します。斎藤通紀氏は始原生殖細胞に特異的に発現する遺伝子を次々に同定し、その形成に必須の2つの転写制御因子を見出し、その機能を証明し、生殖系列の形成機構を初めて解明しました。この成果をもとにES細胞やiPS細胞から胚体外胚葉細胞を誘導し、これを始原生殖細胞様細胞に分化させ、更にこれを精子や卵子にまで分化させることに成功しました。このようにして誘導された精子や卵子から健常な新生仔マウスが生み出されることも証明しました。
 始原生殖細胞様細胞から卵子を誘導した研究は、Science誌が選ぶ2012年の10大研究の1つに選ばれました。斎藤氏は本研究領域の世界の第一人者と認められており、今後この分野の発展に更に大きな貢献をするものと期待されます。

氏名 佐藤 仁 (さとう じん) 佐藤仁
生年月

昭和43年4月(45歳)

現職

東京大学東洋文化研究所准教授

専門分野 資源論、国際開発研究
研究課題 『資源』の認識と分配に着目した国際協力研究
選考理由

 佐藤 仁氏は、「資源」に関して、新しい視点から研究を進めてきた成果を示しつつあり、学際的な仕事を新しい資源論として提示しています。資源は従来所与のものとして正面から研究の対象とされてきませんでした。しかし、同氏は経済学的な考え方を充分に消化し、東南アジアの現地調査を踏まえて、住民の立場から見た資源開発の在り方を論じています。今日の対外経済協力、開発援助、国際協力から見て、資源は政治的、あるいは外交的な対象としてのみ議論されることが多いですが、同氏は自然科学的な発想をも取り入れて提示している点で独創的であり、従来のこの分野における業績として一頭地を抜いています。すでにいくつかの賞を授与されていますが、今後のさらなる研究の発展を大いに期待される研究者です。

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