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日本学士院新会員の選定について

日本学士院は、平成25年12月12日開催の第1074回総会において、日本学士院法第3条に基づき、次の5名を新たに日本学士院会員として選定しました。

(1)第1部第1分科
氏名 小林道夫(こばやし みちお) 小林道夫
現職等 龍谷大学文学部特任教授、京都大学名誉教授
専攻学科目 西洋近世哲学・科学哲学
主要な学術上の業績

 小林道夫氏は、デカルト哲学に発する西洋近・現代哲学、それと関連する科学思想史、科学哲学を多岐にわたって研究してきました。業績の第一は、デカルト研究であり、小林氏は、その著作において、デカルト哲学の形成から、認識論、形而上学、自然学と道徳論を、体系的に論述し、日本におけるデカルト哲学の体系的理解に画期的な貢献をしました。特筆すべき点は、従来、フランスにおいても十分になされてこなかった「デカルトの自然哲学」の研究であり、この研究成果は初めにコレージュ・ド・フランスにおける連続講演として結実し、さらにその講演内容はフランス語で公刊され、フランスひいては国際的に高く評価されました。このように、同氏の学問的業績の顕著な特徴は、哲学思想史についての堅固な研究に基づき、哲学の諸問題を究明しようとするところにあります。


【用語解説】

◯デカルト(1596-1650)
フランスの哲学者、数学者、科学者。近世哲学の祖、近代自然観の定立者と称せられている。主著に、『方法序説』、『省察』、『哲学の原理』、『情念論』などがある。
◯自然学
印欧語では、物理学(physics)と同じ。日本では19世紀初頭までの著作に訳語 として「自然学」をあて、その後、現代まで「物理学」という訳語を使っている。
◯自然哲学
自然学とほぼ同義。ちなみにニュートンの有名な『プリンキピア』の原題は「自然哲学の数学的諸原理」である。ただし、「デカルトの自然哲学」という場合は、 自然学の認識論的・形而上学的基礎づけの意味をも含む。
(2)第1部第2分科
氏名 鈴木茂嗣(すずき しげつぐ) 鈴木茂嗣
現職等 京都大学名誉教授
専攻学科目 刑事法学
主要な学術上の業績

 鈴木茂嗣氏の研究対象は、刑法、少年法をも含めて刑事法の広い分野に及んでいますが、とりわけ刑事訴訟法について、捜査から公訴、公判、上訴、再審に至るまで、すべての領域にわたって優れた業績を上げ、学界をリードしました。鈴木氏は、まずドイツ刑事訴訟法学に学び、とくにゴルトシュミットの学説を参考に独自の基礎理論を構築し、さらにアメリカに留学して視野を広げ、多数の論文を発表して刑事訴訟法学の進歩に貢献しました。その成果は、『刑事訴訟の基本構造』など、三冊の論文集にまとめられています。比較的最近には、刑事の実体法(刑法)にも深い関心を寄せ、犯罪の「性質論」と「認識論」とを峻別するという手法でパラダイムの転換を試み、体系書『刑法総論』と論文集『犯罪論の基本構造』を上梓しています。


【用語解説】

○ゴルトシュミット(1874-1940)
ドイツの訴訟法学者。その著書 Der Prozess als Rechtslage (1925)は、団藤重光の刑事訴訟理論に大きな影響を与えた。
○(刑事訴訟法の)基礎理論
個々の条文の註釈の域を超え、刑事訴訟法典の全体的な理解の基礎となる理論。 当初ドイツで発達し、日本では、小野清一郎、團藤重光、平野龍一などの諸学者によって導入され、深化した。
○(犯罪の)性質論
犯罪とは何か、すなわち犯罪の性質を問題とする理論。これを論じるのが、刑法学の任務だとする。
○(犯罪の)認識論
犯罪をいかにして認識するかを問題とする理論。従来、刑法学上の犯罪論は犯罪の認識論を目指すべきものとされてきた。しかし、これを刑法学ではなく刑事訴訟法学の検討課題と位置づけ、刑法学上の議論の簡明化を図ろうとするのが鈴木理論。
(3)第1部第2分科
氏名 藤田宙靖(ふじた ときやす) 藤田宙靖
現職等

東北大学名誉教授

専攻学科目 行政法
主要な学術上の業績

 藤田宙靖氏は、日独行政法学で構築されてきた「法律による行政の原理」・「近代法治国家の原理」を「ものさし」(理念型)として、独自性・一貫性を保ちつつ新たな法現象にも柔軟に対応できる行政法総論(作用法救済法)の体系を樹立し、わが国公法学の発展に多大の寄与をしました。藤田氏が提示した、「行政主体と私人の二元的思考」・「行政の内部関係と外部関係」の図式および行政活動の「3段階構造モデル」は、近・現代における日本行政法の構造の重要な分析視角となっています。
 同氏は、行政作用法とは異なる行政組織法なるものの固有性を解明することに努力を傾注し、行政組織法論の深化、体系化に大きな貢献をしました。同氏の業績はさらに、行政法各論の分野にも及んでいますが、とりわけ土地法の分野では、ドイツ法との比較を基礎として日本法の特色をみごとに描き出しています。


【用語解説】

○法律による行政の原理
「行政活動は法律に適合していなければならない」という原理。ドイツ語の Gesetzmäßigkeit der Verwaltung に由来する。自由主義的な近代法治国家思想に基づく。その具体的内容については諸説あり、英米法における[法の支配](Rule of Law)との異同には論争がある。
○行政作用法・行政法各論
行政活動を規律する法。いわゆる情報公開法、行政手続法、行政代執行法など通則的法典もあるが、行政分野ごとに多数の個別法が制定されており(国税通則法、都市計画法、学校教育法など)、これらの各行政分野を研究対象とするのが行政法各論である。
○行政救済法
行政活動により利益を侵された者の救済に関する法。行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法などの通則的法典がある。
○行政組織法
行政組織に関する法。国家行政組織については内閣法、国家行政組織法など、地方公共団体の組織に関しては、地方自治法、各地方公共団体の組織条例などがある。
(4)第2部第4分科
氏名 佐藤勝彦(さとう かつひこ) 佐藤勝彦
現職等

大学共同利用機関法人自然科学研究機構長、
明星大学理工学部客員教授、
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構
客員上級科学研究員、
東京大学名誉教授

専攻学科目 宇宙物理学
主要な学術上の業績

 佐藤勝彦氏は、素粒子間に働く力の統一理論に基づくと、宇宙初期に極めて大きな真空のエネルギーが存在することに着目し、このエネルギーによって宇宙が加速的急膨張を起こすという理論を世界に先駆けて提唱しました(この理論を米国のA. Guth はインフレーションと名付けました)。佐藤氏は更に、相転移で解放された真空のエネルギーによって、宇宙は熱い火の玉(ビッグバン)となることを示しました。
 この加速的急膨張は、現在の宇宙が本来因果関係を持ち得ない広い領域にわたり、何故一様に等方なのか等を自然に説明する画期的な考えでした。しかもこの理論の主要な予言はNASAのCOBE 衛星、その後継機WMAP等によって実証されています。
 以上の通り、同氏のモデルは現代宇宙論のパラダイムを形成する重要なものです。
 また、宇宙論的観測から微弱な相互作用をする素粒子の質量、寿命に制限がつけられることを先駆的に示し、現在、新たに予言された粒子に広く応用されています。


【用語解説】

○力の統一理論
自然界に存在する種々の力は、根源では一つとする理論。
○加速的急膨張
膨張速度が時間と共に倍々ゲームのように急速に増大することを言う。
インフレーション理論
(5)第2部第7分科
氏名 山中伸弥(やまなか しんや) 山中伸弥
現職等

京都大学iPS細胞研究所所長/教授、
京都大学物質-細胞統合システム拠点
連携主任研究者

専攻学科目 幹細胞生物学
主要な学術上の業績

 山中伸弥氏は、マウスやヒトの皮膚細胞に4種の遺伝子を導入し、ES細胞(胚性幹細胞)と同等の、ほぼ無限に増殖する能力と様々な組織や臓器の細胞を作り出す多能性を持つ、iPS細胞を樹立しました。このiPS細胞は、組織や臓器を再建する再生医療や、薬剤開発への応用が期待されています。分化した細胞を受精卵のように多能性状態に再プログラムが可能なことは、カエルなどの体細胞核を、核を除いた未受精卵に移植する実験で示されていましたが、そこには複雑なプロセスがあると考えられていました。これに対し山中氏らは、わずか数種類の因子により再プログラムが可能であることを示すことで、その分子的な機序解明に向けた道筋を付けました。


【用語解説】

○ES細胞(embryonic stem cell: 胚性幹細胞)
動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる未分化の細胞株のこと。
○多能性
神経、筋肉、肝臓の細胞など、体中のあらゆる種類の細胞に変化できる能力のこと。ただし、多能性をもつ細胞のみでは、胎盤などを形成できないため、単独では個体が生まれることはない。
○再生医療
病気や怪我で損なわれた臓器の働きを、自分の別の部位の幹細胞や、他人の幹細胞を使って、機能回復を目指す医療のこと。

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