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日本学士院新会員の選定について

日本学士院は、平成22年12月13日開催の第1044回総会において、日本学士院法第3条に基づき、次の12名を新たに日本学士院会員として選定しました。
今回の選定で会員数は138名となります。

(1)第1部第1分科
氏名 富永健一(とみなが けんいち) 富永健一
現職等 東京大学名誉教授
専攻学科目 社会学
主要な学術上の業績

富永健一氏は機能主義社会学者として「社会変動の理論」を構築しました。片々極まりない社会の変化を普遍的に捉えることは困難な作業です。富永氏は社会構造という比較的変化しないものが変化した時こそ社会変動であると定義し、近代化をキーワードに社会変動を引き起こす種々の命題について精緻な論考を進めました。近代化は西洋に端を発するとされますが、同氏は近代化を経済、政治、社会、文化など種々のサブシステムの変化としてとらえます。ここで西洋と非西洋の近代化を考える上で、各サブシステムのタイムラグという時間軸を導入することで普遍的にとらえる視点を創発しました。
さらに社会変動の実例として社会階層と社会移動の実態を全国調査により実証的に移動の流れを推定し、経験社会学の分野にも大きな貢献を果たしました。また同氏は家族数、女性の就業率、出生率など種々の統計資料を駆使し、家父長制度社会の解体から核家族化への道をたどり、さらに核家族における「機能喪失」と「解体」への道を日本の現状と結び付けて説明し、社会変動の理論における「社会構造」の「機能的必要」という「普遍理論的概念」と結びつける試みを提示しました。
同氏は「理論」と「経験的事実」の関係を、東西の社会史について「構造」と「機能」の視点からその変遷を分析し、さらに該博にして緻密な社会学史についての批判的論考より「理論」と「事実」との有機的連関を目指した比類なき社会学者です。

【用語解説】

○(社会学的)機能主義
分化している経験的な諸現象(要素)間の相互依存関係を経験的に確実な方法でとらえ、理論的統合を目指す立場。
○社会構造
その社会全体によって承認され制度化された規範による人員配分および持続的な配置として定義されている。
○社会階層
全体社会において社会的資源ならびにその獲得機会が不平等に分配されている社会構造状態を表示する語。
(2)第1部第1分科
氏名 東野治之(とうの はるゆき) 東野治之
現職等

奈良大学文学部教授、東京国立博物館客員研究員

専攻学科目 日本史
主要な学術上の業績

東野治之氏は、日本古代史のうち、7~8世紀(飛鳥・奈良時代)のころを主たる研究分野とし、各種の文献史料を精密に解読することにより、国制史から上代国語の問題にわたって、古代史の真実に迫るすぐれた業績を挙げています。特に1961年(昭和36年)に平城京跡で出土して以来、各地での発見が相ついだ木簡は、新しい文字史料として注目されましたが、東野氏は早い時期にその調査・研究に従事し、木簡研究の基礎となる論文を多く発表しています。木簡の中には、習字に使用した断片もありますが、同氏はその文字を判読するとともに、漢籍に関する該博な知識に基づいて、出典を明らかにし、さらには漢字文化受容の実態を解明しています。このほか、金石文(きんせきぶん)の解読や、正倉院宝物など美術品や工芸品の研究、また遣唐使や鑑真をめぐる日唐関係の解明にも、すぐれた成果を上げています。

【用語解説】

○文献史料
文字で書かれた史料の意味で、『日本書紀』など編纂物と、正倉院文書など古文書、刀剣や石碑などに刻まれた金石文、さらには木簡などを総称し、歴史研究の基本的材料となるものである。
○木簡
木の札に文字を書いたもので、地方から税として都に運ばれる物に付けた荷札や、官庁内部での事務処理などに用いられ、使用後は溝などに投棄されたのが、近年、土中から発掘されている。
(3)第1部第2分科
氏名 小山貞夫(こやま さだお) 小山貞夫
現職等

東北大学名誉教授

専攻学科目 西洋法制史
主要な学術上の業績

小山貞夫氏の学術的功績は、イングランド法制史学を日本に根付かせ、法制史学界の視野を飛躍的に拡大させた点にあります。この分野の最重要課題は、在来の法制が深刻な社会変動に直面したときの対応ぶりを解析することです。3冊の論文集※に結集している小山氏の業績の中でも「マグナ・カルタの歴史的意義」及び「マグナ・カルタ神話の創造」、「陪審制と職権的糾問手続への史的岐路」等の論文は、島国イングランドがこうした変動期にヨーロッパ大陸諸国とは異なり、ローマ法を継受するのではなく、12世紀以後の独自の法を近代まで維持発展させる形でいわゆる英米法を形成してきた歴史を明快に描き出しています。
9世紀以後、中国から離れた独自の法を発展させ、さらに19世紀に西洋法を導入した歴史をもつ日本は、「中国法対日本法」と「西洋法対日本法」という2つの視点から研究を蓄積してきましたが、ここに同氏は「ヨーロッパ大陸法対英米法」という第3の視点を付け加えました。これは学界に飛躍的な発展の道を拓くものです。

※3冊の論文集
『中世イギリスの地方行政』(創文社、昭和43年、増補版平成6年)、『イングランド法の形成と近代的変容』(創文社、昭和58年)、『絶対王政期イングランド法制史抄説』(創文社、平成4年)

【用語解説】

○法制史学
歴史学と法学との境界領域に属し、諸文明、諸国の法制度や法観念の特徴を歴史的に考察する専門領域。法哲学・法社会学などと並ぶ、法学の基礎領域の一つ。
○マグナ・カルタ
有名ではあるが法的には無効とされている1215年のものを含めその後10年間に計4つの同名法があるが、国王の専制に対する被支配者の権利を謳った「イングランド人の自由の守り神」として古来崇められてきた。
(4)第1部第2分科
氏名 平井宜雄(ひらい よしお) 平井宜雄
現職等 東京大学名誉教授、専修大学法科大学院教授
専攻学科目 民法
主要な学術上の業績

平井宜雄氏は、民事責任論を中心とした債権法の領域において、民法解釈学の水準を高め、革新しました。例えば損害賠償の範囲につき、通説であった相当因果関係説を、事実的因果関係、賠償されるべき損害の範囲の確定、損害の金銭的評価の三つの要素に分析して考察すべきことを論じ、通説を覆滅しました。それ以外の領域でも、法律行為という概念の意義をその生成の歴史に照らして明らかにするなど、多くの点で従来の説に対する根源的批判を行って新しい説を主張し、後の学説の従うところとなりました。
平井氏はさらに、法律学を伝統的な枠組みの外から捉え体系化する「法政策学」を提唱し、また、法律解釈論の方法についても、法的思考様式に基づく「議論としての法律学」を主張し、ともに多くの追随者を見ています。

【用語解説】

○民事責任論
人が他人に対して損害を加えた場合には、双方に契約関係がありそこから発生する義務を履行しないために生じた損害を賠償する責任と、原則として他人同士の間で加害行為が発生した場合に生じた損害を賠償する責任とがあるが、その両者を総合して検討する理論体系。
○債権法
民法は財産権を物権と債権の二種に分類して、各一編をあてている。債権とは、他人に対して一定の行為を請求する権利である。
○相当因果関係説
加害行為と因果関係のある損害につき、漠然と、相当の因果関係がある範囲で賠償する責任を負うとする説。
○法律行為
私法上の権利義務を発生させる行為のうち、人の意思に基づいてなされ、法律も原則として意思どおりの権利義務を発生させるもの。契約、遺言はその例。
(5)第1部第3分科
氏名 藤田昌久(ふじた まさひさ) 藤田昌久
現職等

甲南大学特別客員教授、
(独)経済産業研究所所長、
京都大学経済研究所特任教授、
京都大学名誉教授

専攻学科目 都市・地域経済学(空間経済学)
主要な学術上の業績

藤田昌久氏は、伝統的な都市・地域経済学の分野で研究生活をはじめ、そこで優れた業績をあげたのち、1990年代に大きな発展をみせた空間経済学の分野で、米国のクルーグマン博士と並んで極めて重要な研究成果を挙げました。
空間経済学は、都市・地域経済学をふくみ、国内外の産業立地や人口集積、国際分業と労働資本の国際移動など、さまざまな集積・分業のありかたを、統一的かつ経済学的に分析する学問分野です。藤田氏は、クルーグマンとの先駆的な共同論文や、世界的に有名な共著『空間経済学―都市・地域・国際貿易』、あるいは他の研究者との共同著作をとおして、空間経済学の発展に欠くべからざる貢献をなしました。

【用語解説】

○都市・地域経済学
都市経済学は、人口や産業の集積をもとに成長・変遷する都市の諸問題を、その空間的構造に重点を置きながら、経済的に分析する学問分野。地域経済学は、1つの国内を対象として、一般に都市よりも広域的な経済圏、及びそれらの相互間の経済的諸問題を分析する学問分野。両分野とも1960年代より発展してきた。
○クルーグマン博士
ポール・クルーグマン(Paul Robin Krugman)。アメリカの経済学者。現プリンストン大学教授、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授。2008年にノーベル経済学賞を受賞した。受賞理由は、貿易パターンと経済活動の立地に関する分析。
(6)第2部第4分科
氏名 益川敏英 (ますかわ としひで) 益川敏英
現職等

名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長、
京都産業大益川塾教授・塾頭、
京都大学名誉教授

専攻学科目 物理学
主要な学術上の業績

益川敏英氏は素粒子の世界におけるCP対称性の破れの原因を解明しました。素粒子の世界における粒子と反粒子は互いに対等と思われていました。これをCP対称性の保存といいます。しかし1964年にK0中間子とその反粒子の間でCP対称性が破れている事が実験的に示されました。このCP対称性の破れの起源は謎に包まれていました。1973年に益川氏と小林誠氏はワインバーグ、サラム理論の枠内では、当時知られていた4種類(2世代)のクオークではCP対称性の破れを説明出来ない事を証明し、さらにもし6種類(3世代)以上のクオークが存在するならば、CP対称性の破れが起こりうる事を示しました。第3世代のクオークの存在の予言は大胆でしたが、1974年にまずチャームクオークが発見され、その後第3世代のボトムクオークとトップクオークも発見され、小林、益川の予言は確証されました。

【用語解説】

○CP対称性
自然法則では荷電(C)および空間(P)の対称性が成り立っていると信じられているが、1957年、弱い相互作用においては、どちらも破られていることがリー・ヤンによって予言され、実験的にも証明された。しかし、CとPとは同時に破られており、その積であるCPは保存されていた。1964年、フィッチ・クローニンは中性中間子の崩壊においてそれが僅かに破られていることを発見した。小林・益川理論は、初めてその理論的説明に成功した。
○反粒子
相対論的な場の量子論では、全ての素粒子にはその反粒子が存在する。反粒子とは、質量が同じで逆符号の電荷と磁気モーメントをもつ粒子のこと。
○ワインバーグ、サラム理論
電磁相互作用と弱い相互作用は互いに関係しあっていて、まとめて電弱相互作用として統一的に理解すべきとの立場から作られた統一理論。
○クオーク
物質の中心にある原子核は陽子と中性子からできている。陽子、中性子はさらに根源粒子であるクオーク(u及びd)3個から構成されている。このほかにストレンジ粒子が知られていて、それはストレンジクオークsを構成子とする。1970年初めまでは、この3種類しか知られていなかった。小林・益川理論が登場する頃、宇宙線の中に第4番目のクオークcによるものとされる現象が見つかり、その後、加速器実験でcのみならず、小林・益川理論の予言するクオークb、tが見つかった。
(7)第2部第4分科
氏名 黒岩常祥(くろいわ つねよし) 黒岩常祥
現職等

立教大学大学院理学研究科特任教授・
極限生命情報研究センター長、
東京大学名誉教授

専攻学科目 生物科学
主要な学術上の業績

黒岩常祥氏は、生命活動に必須な細胞内のエネルギー変換器官であるミトコンドリア葉緑体の増殖機構を研究し、これらが、多重リング構造から成る独自の装置を使って分裂増殖することを発見しました。さらに、それらの構成成分を明らかにするなど、謎に包まれていた細胞小器官の分裂・増殖の基本機構を解明しました。この研究を推進するため、原始紅藻シゾンを実験材料として開発し、真核生物では初めて100%ゲノム解読に成功しました。また、ミトコンドリアと葉緑体の遺伝様式を特徴づける「母性遺伝」の研究にも取り組み、雄由来のDNAが独自の分解酵素により選択的に分解されることを見出し、なぜ、母方の遺伝子だけが子に伝えられるのか、その分子機構を解明しました。これらは、日本が世界に誇ることのできる独創的な研究成果です。

【用語解説】

○ミトコンドリア
生物の活動に必要なエネルギーを作り出す細胞小器官で、20億年前に宿主細胞に共生した細菌の子孫と考えられ、独自のDNAを含み、分裂増殖する。
○葉緑体
植物は光合成により二酸化炭素を固定して糖を合成する。この光合成のための細胞内小器官が葉緑体(色素体)で、ミトコンドリアと同じように、共生した藍色細菌(シアノバクテリア)の子孫と考えられDNAを含み分裂増殖する。
○原始紅藻シゾン
学名をCyanidioschyzon merolaeといい、高温強酸性の温泉に生息する単細胞生物。各細胞小器官をほぼ1個だけ含む。
○真核生物
個体を構成する細胞の中にDNA(ゲノム)が核膜で覆われた核を有する生物のこと。
○母性遺伝
受精において、細胞核のゲノム(遺伝子)は、両親から一組ずつ子に伝達される。しかしほとんどの生物のミトコンドリアや葉緑体の遺伝子は、母親の遺伝子のみが子に伝達される。これを母性遺伝という。


葉緑体の分裂装置による分裂
葉緑体の分裂装置による分裂

取り出された分裂装置
取り出された分裂装置

分裂装置の構造と収縮モデル
分裂装置の構造と収縮モデル
(8)第2部第4分科
氏名 小林 誠(こばやし まこと) 小林 誠
現職等

(独)日本学術振興会理事、
高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授、
総合研究大学院大学名誉教授、
名古屋大学特別教授

専攻学科目 物理学
主要な学術上の業績

小林誠氏は、1973年、益川敏英氏との共著論文において、1964年にK中間子崩壊過程で発見されたCP対称性の破れを理論的に説明することに成功しました。そして、物質の根源粒子であるクオークが3世代にわたり6種類存在しなければならないことを結論づけました。当時はまだ、クオークは陽子、中性子、ラムダ粒子に対応する3種類しか知られていませんでしたから、この6種類という予言がいかに時代に先んじていたかがわかります。実際、その後間もなく第4番目のクォーク(c)が発見され、やがて、第3世代のクオーク(bおよびt)もすべて発見されるに到りました。さらに最近、高エネルギー加速器研究機構およびスタンフォード大学SLACのBファクトリーにおいて、CP対称性の破れがB中間子の系でも発見されるに及んで、小林・益川理論は素粒子物理学において、ゆるぎない地位を確立しました。いわば「素粒子の周期表」を予言し確立した、ということができます。

【用語解説】

○K中間子
湯川博士の予言したパイ中間子より重く、陽子の約半分の質量を持つ中間子で、ストレンジネスという量子数を担う。正負および中性の荷電をもち、2−3個のパイ中間子に崩壊する。初め宇宙線の中に発見され、その後は加速器によって人工的に生産されている。第3のクオークsで構成されている。
○CP対称性
自然法則では荷電(C)および空間(P)の対称性が成り立っていると信じられているが、1957年、弱い相互作用においては、どちらも破られていることがリー・ヤンによって予言され、実験的にも証明された。しかし、CとPとは同時に破られており、その積であるCPは保存されていた。1964年、フィッチ・クローニンは中性中間子の崩壊においてそれが僅かに破られていることを発見した。小林・益川理論は、初めてその理論的説明に成功した。
○クオーク
物質の中心にある原子核は陽子と中性子からできている。陽子、中性子はさらに根源粒子であるクオーク(u及びd)3個から構成されている。このほかにストレンジ粒子が知られていて、それはストレンジクオークsを構成子とする。1970年初めまでは、この3種類しか知られていなかった。小林・益川理論が登場する頃、宇宙線の中に第4番目のクオークcによるものとされる現象が見つかり、その後、加速器実験でcのみならず、小林・益川理論の予言するクオークb、tが見つかった。
○Bファクトリー
電子・陽電子の高輝度衝突によってB中間子を大量に発生させ、その崩壊モードを精密に観測するための実験室で、衝突型加速器リングと短寿命で飛行距離の短いB中間子の崩壊粒子を同定するための装置からできている。世界に二つあり、CP非保存の現象において、小林・益川理論の検証に大きな役割を果たした。
○B中間子
第5のクオークbを構成子としてもつ中間子で,陽子の質量の六倍近くの質量をもつ。電子・陽電子衝突の中で発見された。その崩壊においてCP保存が大きく破れている可能性を持つため、Bファクトリーが作られ、精密な実験が行われるようになった。
(9)第2部第4分科
氏名 長田重一(ながた しげかず) 長田重一
現職等 京都大学大学院医学研究科教授
専攻学科目 分子生物学
主要な学術上の業績

長田重一氏は、分子生物学の研究を展開し、細胞死に関して画期的な成果を上げました。なかでも、動物の発生や新陳代謝の際におこるアポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こすサイトカインとその受容体を同定しました。ついで、この細胞死の過程には、特殊な蛋白質分解酵素やDNA分解酵素が関与していること、死滅した細胞を速やかに体内から除去、分解するシステムが存在することを発見しました。また、アポトーシスシステムが動かなくなると自己免疫疾患など種々の病気を引き起こすことも見いだしています。以上、長田氏の業績は、細胞死の原理、生理作用を解明したものであり、理学、特に生命科学の発展に大きく貢献するものです。

【用語解説】

○アポトーシス
アポトーシスとは、花や枯葉が落ちる様子を示すギリシア語。動物の形態形成時には多くの細胞が死滅するが、この細胞死はアポトーシスと呼ばれている。アポトーシスでは、細胞や核が凝縮・断片化し速やかにマクロファージなどの貪食細胞により貪食分解される。一方、物理的、化学的要因による細胞死では、細胞や核が膨潤し破裂し、ネクローシスと呼ばれている。
○サイトカイン
リンパ球やマクロファージが発現する蛋白質であり、分泌性のものと細胞膜に結合したものが存在する。サイトカインには細胞の増殖、分化を促進するもの、細胞死を誘導するものが存在する。サイトカインは標的細胞の表面に発現されている特異的な受容体に結合することによりその作用を発揮する。
○自己免疫疾患
本来、細菌やウイルスに対して反応すべき免疫反応が自分自身の臓器や細胞、自己のコンポーネント(核酸、蛋白質、脂質)に対して反応・攻撃するようになった病気の総称。
(10)第2部第5分科
氏名 霜田光一(しもだ こういち) 霜田光一
現職等 東京大学名誉教授
専攻学科目 物理学
主要な学術上の業績

霜田光一氏は、東京大学理学部物理学教室において1948年頃からマイクロ波回路、特に空洞共振器について詳しい検討を行い、アンモニア分子等のマイクロ波スペクトルを研究し、原子時計の開発と周波数標準の精度を高める方法を開発しました。これは今日の周波数(時間)と長さの標準を原子や分子のスペクトルに求める流れの発端を作るものでした。さらにコロンビア大学のタウンズ教授の研究室に出張中の1954年には、レーザーの前身であるメーザーの基礎理論と装置の開発に重要な役割を果しました。
また、帰国後は東京大学に短期滞在したタウンズ教授、同僚の高橋秀俊教授らとともにメーザーの量子力学的な雑音について論じ、古典的な電磁波の雑音との違いを理論的に明らかにしました。引き続きレーザー分光とレーザー周波数標準を研究し、国際単位メートルの再定義に貢献しました。

【用語解説】

○タウンズ
チャールズ・タウンズ(Charles Hard Townes)。米国の物理学者。メーザー;レーザーの基本原理を発明。1964年、ソ連のN・G・バソフ、A・M・プロホロフとともにノーベル物理学賞受賞。
○メーザー
特殊なマイクロ波を放射する発振装置の一種。特殊な励起状態にある物質が入射電磁波に誘導されて、電磁波を放出する現象(誘導放出)を利用し、マイクロ波などの電磁波を増幅あるいは発振するもの。放射する電磁波は極めて周波数の安定度が高く雑音が少ないので、宇宙通信や原子時計などに応用される。
(11)第2部第5分科
氏名 内田祥哉(うちだ よしちか) 内田祥哉
現職等

工学院大学特任教授、
金沢美術工芸大学客員教授、
東京大学名誉教授

専攻学科目 建築学
主要な学術上の業績

内田祥哉氏は、建築構法計画学の確立と普及、並びに建築生産のオープンシステムを実現するための理論構築と手法を駆使して、20世紀後半における建築生産と建築学に確固とした道筋を付けました。その結果、建築物の使用者、発注者の要求を満たす設計の解を工学的に導くこと、また多様な設計・生産システムの展開を可能としました。さらに、木造建築の再評価を行うことにより、既存の生産組織や伝統技術を現代技術と共存させながら建築生産システムを漸進的に進化させる手法を提示しました。
科学技術の発展につれて、建築の設計と生産・施工が分離され、また学術研究においても専門分化が進みましたが、これに対して、内田氏は、建築の生産に関するすべての活動を再度結び合わせ、建築の使用者を含むさまざまの立場の人々の創造的参画を可能にしました。その功績は計り知れないと高く評価されています。

【用語解説】

○建築構法計画学
構法計画学は建築計画の1分野で様々な専門分野に分化された建築設計に対する知見を総合的に整理・体系化する。
○建築生産のオープンシステム
建築を構成する各部分や、その設計・生産・維持保全の各プロセスに、多くの人々や組織の専門知識、技術を結集するために考えられたシステム。すなわち構造体と分離された内装・設備のサブシステムを用意して、多様な住要求に対応し、かつ長寿命化を保障する。
(12)第2部第5分科
氏名 飯島澄男(いいじま すみお) 飯島澄男
現職等

名城大学大学院理工学研究科教授、
(独)産業技術総合研究所ナノチューブ応用
研究センター長、
日本電気株式会社特別主席研究員、
名古屋大学特別招へい教授

専攻学科目 物質科学
主要な学術上の業績

飯島澄男氏は、1970年代に、電子顕微鏡を用いた高分解能観察を実現し、世界に先駆けて結晶中の原子の撮影に成功しました。この研究はその後、原子構造を直視するという高分解能電子顕微鏡法の発展の礎となりました。また飯島氏は、結晶中の欠陥構造や超微粒子の構造不安定性についても先駆的な研究成果を挙げ、物理学、結晶化学、鉱物学、材料科学の発展に幅広く貢献しました。1991年には極小の円筒構造とユニークな性質を持つカーボンナノチューブを発見し、学界・産業界に大きな衝撃を与えました。同氏の研究成果は国際的にも高く評価されており、現在でもナノサイエンス・ナノテクノロジー研究における世界的な第一人者として活躍しています。

【用語解説】

○電子顕微鏡
光学顕微鏡では光(波)を用いてガラスレンズにより物体を拡大するが、電子顕微鏡では電子線(波)を用いて、磁界レンズにより拡大するため分解能が向上し、物質構成原子を直接観察することが可能になった。電子線や観察物体の置かれる電子顕微鏡内部は真空になっている。
○分解能
器械装置などで物理量を測定・識別できる能力をいう。顕微鏡の場合、見分けられる最小の距離または視角をさす。
○カーボンナノチューブ
炭素原子がハチの巣状に六回対称に並んだシートを多数重ねた構造体が黒鉛(グラファイト)で、自然界に存在する。このシートを一枚とり、継ぎ目がないように丸めた円筒状構造体を単層カーボンナノチューブ、複数個の構造体は多層カーボンナノチューブと呼ばれる。それらは人工的にのみつくられ、直径は数ナノメートル以下の大きさである。黒鉛とは異なるユニークな特性をもち、その特徴を活かした工業製品が創出されている。
カーボンナノチューブのモデル図
カーボンナノチューブのモデル図

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